Anycubic Kobra 2を使ってみる

 

 

 Amazonブラックフライデーの終了間際に、Anycubic Kobra 2を飛び込みで購入した。偶然にもセール対象商品になっていて、かなり安く購入できたからだ。素人ながらAnycubic Kobra 2の所感について書こうと思う。

 

機種選定

 2023年にプリントスピードが速い機種がいくつか販売された。また、オートレベリングの性能が良くなり、今までより簡単に扱える機種が増えたらしい。そのような機能を持つ低価格の機種が、CrealityとAnycubicとELEGOOの3社から売られている。そのような中から貧しい資金力で購入できる以下の機種に絞った。

Creality Ender-3 V3 SE

・ABSでプリントできない可能性が高いし、フィラメントセンサーが無い

よって、値段の割には機能が削られすぎている印象があったため不可

金があればKEを選択するのもありだったのだが・・・

ELEGOO Neptune 4

専用スライスソフトが推奨され、それ以外のソフトでは扱いずらいと思ったため不可

そもそもELEGOOのセールをやっていなくて、資金不足で不可

Anycubic Kobra 2 Neo

X軸フレームが片持ち支持で不安だし、エクストルーダーの構造が簡素になっている

構造に不安が残るため不可

Anycubic Kobra 2

偶然セール対象になっていた ←ここ重要

ABSはもちろん使えて、汎用的なスライスソフトもOK。特筆して優れた点があるようには思えないが、個人的に欠点が少なく堅実な印象。

よって、上の機種たちと比べてマシという判断

強いて言えば、後から販売されたNeo/Pro/Plus/Maxと比べると無印Kobra 2には型落ちの気配がすることだろうか。

 

組み立てる

 昨今の安価な3Dプリンタは、上に伸びたZ軸でX軸を支えている構造が多い。台座と上部を分離して箱詰めされており、多少なりともユーザーが最終組み立てを行う必要がある。Anycubic Kobra 2もそれに漏れず、同封された工具を使ってそれらを組み立てる。付属のSDカードに入っている組み立て解説動画とユーザーマニュアルを見つつ、適宜に製造元のサイトで調べれば何の問題もない。日本語の文書があって本当に良かった。

 組み立てた後に柱にスコヤを当てると、片方の柱だけ勾配0.7%ほど傾いていた。だがオートレベリングでフレームの歪みを補正してくれるので、極端に歪んでない限り誤差を気にする意味は無いだろう。同じ層をプリントしているにも関わらずZ軸を再々動かして調整していたし、定着不良でもオートレベリングをすると成功した。本当にオートレベリングしているらしい。

 紆余曲折あって、マジナイ的な起工式としてネジ穴のバリを取り除いた。今思えば、家内安全でも願いながらマニ車として回せばよかった。直ぐにオシャカになられては困るから神頼みである。

 

調整し、プリントしてみる

初期設定

 一番初めに、XYZ軸にあるベアリングの偏心ナットやベルトの張り具合を調節しておくべきだ。後で締め直したら、オートレベリングをもう一度やり直すハメになるからだ。ナットやらをどれくらい締めれば良いのか分からないが、各部を上下左右に揺すった時にガタガタ音が鳴らない程度にしておく。

 早速オートレベリングなる機能を使った。ホットベッドの傾きを手で調整する必要は無く、ほんの数分間でホットベッドを測り終えていた。適用前後でテストプリントして比べてみると、オートレベリングをした後は初期レイヤーの定着が良くなった。やはりきちんと仕事をしているらしい。何でもかんでも自動で済ませてしまうから、本当にしっかり定着できるのか確証を得られなくて逆に困る。そのような方は、Z軸のタイミングベルトが仕事をしている様子を見て安心すると良いだろう。

 フィラメントをノズルにセットするために、プリントヘッドのノブを押しながらフィラメントを軽く差し込んだ後、画面で「Filament In」を選択する。フィラメントを人力で押し込む必要が無いので、古いのを追い出してフィラメントを交換するのが楽だった。まあ、「Stop」を選択するまで延々とフィラメントが出続けるのにビックリしたが。

 ユーザーマニュアルの通りに進めていくと、付属のマイクロSD内の「Leveling Test-0.2-14m-5-17.gcode」をプリントするように指示される。このデータで5枚の薄い板がプリントされ、その結果を元にZオフセット調整するらしい。しかし、このデータでは極端なZオフセット値しか判別できず、Zオフセットを大雑把にしか調整できないと思う。そこで、あの有名な船「3DBenchy」をプリントする。ちなみに船の底だけで十分だ。Zオフセットによって底の文字が敏感に崩れたりするから、プリントされた底面の様子を見ながらZオフセットを調整すればいい気がする。文字が埋まったらZオフセットが低すぎて、フィラメントの間に隙間が空いていたら高すぎる。

 

プリント

 やっと準備を終え、付属の「Fdmtest-0.2-2h20m.gcode」をプリントした。細かい事を気にしたらいろいろあるだろうが、個人的には満足な出来だった。どのスライスソフトでどんな設定をしてこのサンプルデータを作ったのか存じ上げないが、ハードウェア的にできることが分かったからだ。だが、プリンタを良く見せるために工夫を凝らしたサンプルデータだと思うから、私がこの性能を引き出せるとは限らない。スライスソフトのパラメータをいずれ調整しなければならないだろう。まあ、廉価版とはいえ、操作に手がかからずプリントが少し早いのは嬉しい。

 下図のような、0.1mmづつ穴の内径を大きくしたモデルをPLAでプリントした。これらの穴にミガキ丸棒を突っ込んでみたところ、突っ込めなくなる径、嵌りがきつくなる径、抵抗なく突っ込める径が、3Dモデルではどれも同じ経だった。それに、0.1mmづつ内径を変えるごとにこれらの変化が生じた。つまり、Anycubic Kobra 2には少なくとも0.1mmの差を区別してプリントできる分解能があり、それを何度も再現できるようだ。ちなみに、表面が0.1mmほど膨らんだり縮んだりする。安定して0.1mmぐらい形状変化するため、予め形状変化を見込んでモデリングすれば何ら問題もないだろう。

 上記の知見は「私の使用環境では」という但し書きが付くモノである。ご自分で実験して戴きたい。

 

Anycubic Kobra 2の注意点

 Amazonの商品説明をよく読んでみると、推奨印刷速度200mm/sを出すためにファームウェアをV3.0.6にアップグレードする必要がある。買ってそのままの状態、つまりV2.9.3では推奨印刷速度が150mm/sだからだ。製造元のサイトにアップグレード用のデータと導入ガイドがある。興味があればどうぞ。

 しかしここで問題になってくるのは、V3.0.6用のPrusaSlicer向け推奨パラメータが公開されているが、V3.0.6用のCura向け推奨パラメータが公開されていないことだ。販売から数ヶ月も立っているのに関わらず未だにそれが公開されておらず、何らかの問題があるのではなかろうかと疑ってしまう。いっそのこと、試行錯誤を経て山のようにあるパラメータを自力で定めていく手もあるが、面倒だしパラメータへの知識も必要だからやめておいた。速度を高めるために加速度制御やらなんやらが行われるため、安易にパラメータを決めると脱調の原因になり得るからだ。

 Anycubicが公開しているKobra 2のCura向け推奨パラメータでプリントすると、致命的な失敗は無くとも見た目が悪くなることがある。フィラメントの種類など使用環境がユーザーによって異なるから一概には言えないが、細かいところまでパラメータが調整されていないようだ。見た目をとても気にするならば、推奨パラメータを下敷きにしつつ自力でパラメータを調整しなければならないと思う。

 

参考

 Amazonよりも詳しい情報が製造元のサイトに載せられている。ユーザーマニュアルや組み立て動画、機種の細かい仕様ついてだ。また、CuraやPrusaSlicer向けの推奨パラメータとその適用方法も載せられている。購入する前に、この機種について多くのことを製造元のサイトで知ることができるようだ。

Anycubic Kobra 2 - 6X Faster Auto-Levelling FDM 3D Printer – ANYCUBIC-US

Anycubic Kobra 2 | Anycubic Wiki

Firmware & Software | ANYCUBIC 3D Printing – ANYCUBIC-US

How to Update Anycubic Kobra Series 3D Printer Firmware | ANYCUBIC 3D Printing – ANYCUBIC-US

 

 

 

 Amazonにせかされるあまり、ろくに調べずに購入してしまった。後悔は無いが反省すべきだろう。