自在ドリルガイドを作る

 できるだけ真っ直ぐな穴をあけるために、何らかの治具で工具を案内するか、傾きやブレを分かりやすくしてドリルの姿勢を補正すると思う。特に、何らかの治具で工具をを案内する場合、ドリルドライバーを支えているボール盤に似た機械や、ドリル(キリ)だけを案内する簡便な道具がある。

 

仕組み

 今回、私は任意の太さのドリル(キリ)であってもピッタリ保持できる、簡便なドリルガイドを作った。太さの違ういくつものドリルを、部品交換無しでガイドすることができる。0~6.5mm径であれば小数点付きの中途半端な太さであっても可能だ。だが、ガイドの高さと設計での都合から、太さ3mm以上、もしくはシャンクが長めのドリルが実用的かもしれない。

 下の二つの写真の通り、中央の三つの部品がスライドすることで真ん中の三角穴の大きさを自在に変えている。真ん中の穴の三辺がドリルと接することで、ドリルの回転軸を固定する。だが、たった三つの接線でしかドリルを支えていないため、大きな捻れ溝を持つツイストドリルを支える能力は高くない。接線として支えるはずだった壁がドリルの溝に落ちてしまうからだ。この欠点を改善するために、ドリルガイドの高さを長くする必要がある。具体的には、ドリルの捻れのリード長さよりドリルガイドを高くするといいだろう。例えば、太さ6.5mmの鉄鋼ドリルを支えるために40mmの高さが必要だった。

浅川権八の「機械の素」第22類、自在チャック・スパナを参考にした。ネジ3・4を回すことで四つの爪2が動き、真ん中の穴の大きさが変化するようだ。浅川さんは四つ爪チャックを図示しているが、3Dプリント誤差があっても確実にドリルを固定するためにドリルガイドを三つ爪にした。

 ドリルガイドの断面が下図の通り。斜めの部分を持つ凧型にすることで、3Dプリントなど寸法誤差や組み立て誤差があってもピッタリ嵌められるようにした。オレンジの厚さを調整することで、3Dプリントの造形誤差や鉄板の厚みによる寸法変化に応じてピッタリ嵌めることができる。嵌め合いが悪くても全てを再プリントする必要は無く、小さなオレンジの部品を調節するだけで嵌め合いを加減できる。ピンクと緑の間の嵌りがきついのならオレンジの厚さを高くし、ピンクと緑の間の嵌りが緩く遊びがあるのならオレンジの厚さを薄くする。ピンクの部品の下方にある斜めが浅すぎてクサビの様に働き、摩擦で固く固定されてしまいやすい。オレンジの部品で奥にはまり込まないよにして、それを防いだ。(角度を変えれば改善されるのにね~)

 

製作

 まず、3Dプリントをする。何度もテストプリントすることは無駄なので、プリント後に調整する方法を設計にどれだけ盛り込めるのか大事だったりするかも。ちょっとズレただけで機能が破綻する設計って避けたいね~

 ドリルで穴の壁が削れないように鉄板で3Dプリント品を保護する。少々面倒だが、亜鉛メッキ鉄板から切り出して使う。偶然、我が家にあった物なので材質に拘りは無い。OHPフィルムに3Dモデルの展開図を印刷し、OHPフィルムを被せた鉄板をポンチで叩くことで、頂点の位置を鉄板に転写する。カッターの寿命なんぞ考えずに無心でガリガリ溝をつけ、溝を何度も折り曲げて金属疲労で切断する。苦労して切り出した鉄板を3Dプリンタ品に張り付けて、良し!!

 

ガイドを使ってみる

 それなりに穴をあけることができた。治具を固定しておけば、太さの違う穴を同じ位置に開けることもできる。だが、ドリルを支える性能は高くなく、ドリルとガイドが接触する力に応じて人間が垂直に補正してやる必要があった。細いドリルだと問題無いが、特にリードの長い太りドリルだと軸がブレてしまいやすい。ドリルガイドと言うより、ドリルから伝わる感触でどの辺が垂直なのか把握するための器具と表現するべきかもしれん。また、太いドリルを支えるために、高さが長くなりがちであり、細いドリルでは長さが足りなくなりがちである点もいまいちだ。

 上手く扱えばそこそこな穴が開き、気を抜くとたちまちドリルがブレてしまい易いビミョーなドリルガイドであった。